働き方改革とポジティブメンタルヘルス:ワークエンゲージメントに注目して
弁護士の小島健一先生に教えていただき、第14回メンタル対策公開研究会に参加した。今回の基調講演として、慶応義塾大学総合政策学部の島津明人教授がご講演された。タイトルは「働き方改革とポジティブメンタルヘルス:ワークエンゲージメントに注目して」であった。
ワークエンゲージメントとは、働く人の心の健康についての新しい考え方で、①仕事に誇り(やりがい)を感じ、②熱心に取り組み、③仕事から活力を得て、活き活きしている状態のことを言うそうだ(Schaufeli et al.: J of happiness Studies;3,71-9,2001、Schaufeli & Bakker: J. Organiz Behav.;25, 293-315,2004)。このワークエンゲージメントを提唱したSchaufeli氏は、元々はBurnoutの専門家だったとのこと。Burnoutを研究することにより、行きついた答えが「ワークエンゲージメント」ということであったのであろう。
そして、非常に興味深かったことは、仕事や組織の粗捜しをし、それを取り除く作業をしていると、心理的ストレス反応という「健康障害プロセス」に繋がっていってしまう。しかし、「ワークエンゲージメント」を高めるという「動機付けプロセス」を起こしていくようにするためには、個人の資源や仕事の資源を活かすことが大事と仰っていた。そうすることで、「プラスの健康・組織アウトカム」が得られるようになるとのこと。個人の資源や仕事の資源を活かすということは、すなわち人材開発や組織開発を行っていくことが重要であるとのこと(Schaufeli & Bakker(2004), Bakker & Demerouti(2008))。その手法として、job crafting法などを紹介されていた。
講演会終了後に直接質問させていただいたところ、コーチングやチームビルディングといった手法も有効であると話されていた。こういった、前向きな考え方やコミュニケーション手法を用いて、個人や組織の強みを強化することが、今後ますます求められることになるであろう。
そして、真に「健康な」職場として、生産性が高く、かつスタッフの心身の健康度合いも高いことが大切とも話しをされていた。これを実現していくためには、ワーク・ライフ・バランスが充実した状態を作り出すことも大切で、これは、単に従業員だけでなく、従業員の家族への支援も大切とお話しされていた。
これが、国連が提唱しているSDGsにも繋がっていくと考えられるし、WHOによる心の健康の定義にも当てはまっていくと考える。
もはや医療機関も含めて、経営者は、これらのことを積極的に取り入れずして、その組織を維持することは困難な時代になってきているということを、改めて感じた。