JR東海株式会社様から、お礼状をいただきました。
そして、新幹線(のぞみ)に緊急停車してもらいました。
よくドラマなどで見る「車内で具合の悪いお客様がおられます。どなたかお医者様か看護師さんはおられませんか?」という、あのアナウンスである。
京都での産業医のお仕事をいただいて、初めてその仕事で先月末に京都に向かう新幹線の中のことであった。新横浜駅も過ぎたところで隣の席が空いていたので、これで名古屋まではゆったり座っていけるなと思って間もなくのことであった。まだ小田原駅を通過するかどうかという時に聞こえてきたアナウンスのだが、正直、一瞬躊躇した。普段救急外来で診察しているわけではないので、自分が中途半端にしゃしゃり出て、上手く診断もつけられなかったりすると目も当てられないなと思ったからだ。
ただ、思った以上に具合の悪い方が、僕が座っている席から近い車両と車両の間のデッキにおられたようで、何かしらやりとりする声が聞こえてきた。このため、恐る恐る現場に向かった。すると、すぐに「お医者様ですか?」と車掌さんに声をかけられてしまい、「そうです」としか言えず、間髪入れずに「よろしくお願いします」と言われてしまった。
70歳前後と思われる男性が冷や汗をかかれており、話しかけてみると、「乗車したぐらいから胸痛があり、だんだん我慢できなくなってきた」とのこと。詳細を書くことはできないが、車掌さんに「早めに循環器の先生に診てもらった方がいいですね」とお話ししたところ、「新幹線を緊急停車させますか?」との返答。「僕が判断するの⁉︎」と、思わず一瞬動揺してしまった。
ただそこで、車掌さんが「人命最優先なので、停める必要があるのであれば、我々は停める対応を取ることは問題ありません」と、きっぱり言ってくれた。
そう言っていただいたお蔭で、僕も腹を括ることができ、「それでは、やはり緊急停車させてください」とお願いした。
すると、車内クルーの皆さんが連携し、電話でのやり取り等迅速に対応していただいたお蔭で、三島駅で緊急停車することが決まった。小田原駅付近で救急対応が始まったのだから、今から思うと、かなりスムースな対応を取ってもらったと感じる…。
後日、事務所に行くと、JR東海社から封筒が送られてきていた。開けてみると、お礼状とパイロットの新幹線のロゴ入りボールペンが入っていた。JR関係者のお話だと、このボールペンは非売品とのこと。「貴重ですので、大事に取っておいてください」と教えてもらった。
今回、何とか速やかに医療機関に繋げることができてよかった。二度とこういった経験をすることは無いと思うので、このボールペンは記念に大切に取っておくことにする。