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先日、久しぶりに東京医科大学 糖尿病・代謝・内分泌内科 小田原雅人教授のご講演を聴く機会があった。小田原先生の講演は、糖尿病の最新の臨床研究のエビデンスを分かりやすくご講演される先生で、僕自身も、昔から何度もご講演を聴かせていただき、いつも大変勉強になり、参考にもさせていただいている。

 

産業医になって以降、SGLT-2阻害薬についての最新のエビデンスについて、なかなかアップデートできない状況にあったので、今回も大変勉強になった。

 

小田原先生も仰っていたが、SGLT-2阻害薬が発売開始になった当初は、日本中の糖尿病専門医は、胡散臭い薬が出てきたといった印象を持っていた。特に脱水や虚血などの様々な副作用が懸念されて、私自身も、かなり慎重に投薬を開始し始めた。

それが、何年間の間に、我々の予想を良い意味で裏切り、他の薬剤に比較して短期間でも動脈硬化抑制作用があるという大規模臨床研究が次々に発表され、本当にSGLT-2阻害薬という薬剤の評価が大きく変化しつつある。

 

この心血管系複合エンドポイントを有意に抑制できること(EMPA-REG OUTCOME試験、N Engl J Med. 2015; 373(22):2117-28.)は、DPP-Ⅳ阻害薬では未だに認められていないことである。さらに、総死亡の抑制、心不全入院の抑制や腎合併症の進展抑制も認めることがCANVAS program (N Engl J Med. 2017; 377: 644-57.)やCREDENCE試験(N Engl J Med. 2019; 380(24);2295-2306)の結果から明らかとなってきた。

 

小田原先生は、なぜSGLT-2阻害薬が予想外に、副作用が少ないかの理由として、「家族性腎性糖尿」を例に挙げておられた。学校健診において、時折、尿糖陽性を認めるも、糖尿病ではない子供を見かけることがある。これはこの遺伝的素因が考えられ、その原因として「SGLT-2遺伝子突然変異」が理由と考えられると話されていた。そういった意味で、SGLT-2を阻害するということは、我々が想定していた以上に害が少ないのではないかということだった。

 

また、CREDENCE試験では、e-GFRの値が30-45と腎機能低下を既に認めている患者であっても、血糖値の低下は僅かであるが、血圧や体重の低下、e-GFR値の保持といった、血糖降下作用以外の効果を認めることが分かった。そういった意味では、単なる経口血糖降下薬だけでなく、今後、より幅広い患者さんに使用されることになっていくかもしれない。

 

実際に、欧米では、糖尿病治療アルゴリズムで、第1選択薬としてSGLT-2阻害薬を使用することが推奨され始めている。

 

僕自身、最近、健保や企業の保健師さん向けに、糖尿病の薬物療法の講義を行うことも増えてきた。このため、こういった糖尿病の最先端の情報を知れることは、大変有り難い。僕自身が得たこれらの情報を、多くの職域の医療職に伝え、日本の働く方々の健康増進に少しでもお役立ちすることができればと思う。