「これだけは知っておきたい 医師の働き方改革 実践テキスト」(渡辺 徹 編著:ロギカ書房2021)を読んだ。これは、基本的に医療機関で働いたことのある社労士さんがまとめた本となっている。医師は含まれていないが、コメディカルスタッフも執筆に加わっている。
医療をよく知っている社労士さんが書いているだけに、Chapter1「医療機関を取り巻く環境の変化」として、これまでの日本の医療における問題点と、それに対する今後の課題について、具体的に書かれている。特に「地域医療連携・構想」について、非常にリアリティある内容で分かりやすく示してくれているため、大変勉強になる。
さらに、「医師の働き方改革」についても、2024年春に向けて、随時具体的な要件などが追加で厚労省から提示されているのだが、それも踏まえて、最新の情報を基に、かなり細部にわたり丁寧に解説と対策案を提示してくれている。特にB水準や連携B水準などの指定要件などは、実際に対応が必要な医療機関においては大変参考になると思う。
また、「医師の働き方改革」についての具体的な対策についても、コメディカルスタッフへのタスクシフト・シェアの重要性やその取り組み方法について、各コメディカルスタッフの視点から、分かりやすく具体的に提案してくれている。
ただ一つ、残念ながら不足しているポイントがあるとも感じた。それはやはり、医師からの視点を入れていないということである。「医師の働き方改革」の最大のポイントかつ最大の難所は、医師と看護師・コメディカルスタッフとの腹を割ったコミュニケーションである。そういった面倒なところも、是非、この本の中に組み入れていただけると、さらに価値の高い内容になったと思う。
しかしながら、実際には非常に難しいのは、百も承知である。そう言った観点から、この本は、事務長を含めた、事務方のスタッフが読んでおくことは大切だと思う。
今後も、2024年春に向けて、厚労省などから、どんどん新たな具体案が提示されてくると予想される。このため、こういった本を読んで満足するのではなく、さらに新しい情報にも目を配り、それについてどの様な対策を取っていくべきなのか、さらに新たな本を購入したりして、2024年春を迎えるようにしなければならないなと思う。
そういった意味では、時折り本屋を見回って、その度に新たな本を購入し続けないといけないかなとも思う。