ナッジを利かせた行動変容

今週、行動変容をテーマとした、文天ゼミの座談会形式のセミナーを聴きに行ってきた。

 

8名の先生方が登壇されていたのだが、中でも、青森県立保健大学の竹林正樹先生がお話しされていた、行動経済学で注目されているナッジの話しは大変興味深かった。

ナッジ(nudge)とは、「ヒジで軽く突く」という意味で、科学的分析に基づいて人間の行動を変える戦略のことだそうだ。

私も1度だけテレビを見ていた時に、最近のノーベル賞経済学賞では、今までと違った視点で経済をとらえていると言って紹介されていたのを見て印象に残ってはいたが、直接ご講演を聴くのは初めてであった。

 

竹林先生は健康増進についても、ナッジを利かせる必要があることを強調されていた。私も普段の診療の中で、自然と使っていた言葉の中に、「同調効果」を用いたものがある。

それは、例えば「40・50歳代のメタボで血圧の高い医者は、かなりの割合で降圧薬を服用していますよ」というものだ。実際に病院勤務していると、医者同士でお互いちょっと薬を出して欲しいということは当然ある。その時に処方される内容を見る機会もあるのだが、意外にメタボな中年男性(もちろん第一線でバリバリ働いている)医師が降圧薬を内服していることが多かった。これは、やはり降圧薬を内服しないリスクを知っているからだと思う。そういう意味では、ヘルスリテラシーが高いことも確かに重要なポイントと言える。