僕がTubaを吹いていると、人に話すと、肺活量が多いのですねと言われることがある。
その度に、「果たしてそうであろうか?」と自問自答してしまう。
実は、僕自身は、やはり高校時代が一番上手く吹けていたので、あの時の体型がベストだと思っている。
ということは、かなり痩せ型の状態をイメージしていることになる。
僕のようなど素人の意見など聞いても何の足しにもならないので、今レッスンを受けている芸大生に尋ねてみた。彼も、僕より背は高いが、まったく太っておらず、普通の痩せ型体型の学生さんである。
すると、「無理して太ったりするようなことは考えていません」とのこと。理由として、「太ってしまって、特に内臓脂肪が増えてしまうと、大きく息を吸おうと思った時に、横隔膜が下に降りず、しっかりと肺を膨らませることができない」との返答が返ってきた。予想外に、僕と全く同じ意見である。
するとさらに、「NYフィル?のTuba奏者も10年以上前は物凄く太っていたのだが、今は20㎏くらい減量した」とも教えてくれた。やはりそのプロ奏者も、痩せた時のメリットを実感しているとのこと。
確かに、痩せぎすで、体幹の筋肉量が不足していると、それはかなりデメリットであろう。しかし、無闇に脂肪を増やすことのリスクも考える必要があると思われる。
そう言われてみると、最近のホームランバッターは太っていない(お腹が出ていない)選手もかなり多い。大谷・柳田・山田・坂本・清宮などなど。確かに村上・杉本・筒香・佐藤(輝)など、マッチョな体の大きい選手も多いが、彼らもお腹はあまり出ていない。
昔は、門田・落合・田淵・張本など、ポッコリお腹の人も多かったが…。
糖尿病の外来をしていても、かなり太っている人が、「これ以上痩せてしまうと体力的に落ちてしまうんです」とサラっと言い訳?される患者さんもいる。そういった時に、上記の様な最近のホームランバッターは太っていないといった話をすることがある。概して、そういう例えをすると、嫌そうな顔をされる方が多いが…。
もちろん、健康は抜きにして、脂肪も含めて体を大きくした方が良い声が出るというオペラ歌手などもいる。ただ、大きな楽器だから、体を大きくしないと必ずしもダメだとは言えないということも事実であろう。
そして、本当に上手な金管楽器奏者達は、非常に軽々とあまり力を入れること無く、音を遠くに飛ばす技術を持っている。だからこそ、若くなくても、現役奏者として続けられるのだと思う。
そうしたプロに、コツを聞いてみると、やはり極力無駄な力は入れないようにして、吐いた息が悉く音となるように、常日頃から意識をしているとのこと。
(ただ、素人がそういった意識を持っていても、悉く音に帰ることは極めて難しいことなのであるが…)
これは、ホームランバッターや、ドライバーで飛距離が出るプロゴルファーでも同じことが言えるのかもしれない。究極のトップアスリートになってくると、あまり力まずに最大限の力を発揮するといったことが可能になってくるのかもしれない。
この後、あと何年、この大きな楽器を吹くのか、自分でもよく分からないが、運動を止めてしまって、基礎体力が無くなってしまい、楽器を吹く体型を維持できなくなってしまったその時は、イコール楽器を辞める時でもあるという、自覚は持つようにしている。